第4回 雪に弱くなった雪国

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 ほかにも、佐藤さんの専門、地吹雪についても道路関係機関への情報提供を行っていて、これは視程距離、つまり、何メートル先まで視認できるかという目安を予測している。100メートルというのが、予測のキーとなる数字だ。

「視程距離が100メートルぐらいになると、円滑な交通が妨げられるというふうに言われてますので。ただ、予測値は小型乗用車の運転席から見た時という前提で出しています。吹雪って、走った経験があるとわかるんですが、下のほうほど濃くて、上のほうは薄いんです。トラックのような大型車両ではずっと視界がよい。霧だったら変わらないんですけどね。だから、小型乗用車が前が見えなくてブレーキを踏んで、後ろから大型車両がドンとぶつかる、という事故が起きやすいんです」

長岡技術科学大学との共同研究も。(写真クリックで拡大)

 さらに、研究所内を案内してもらっていると、マイナス5℃の低温室で、長岡技術科学大学の研究者と学生たちが、外から採ってきた雪を使ってなにやら実験をしていた。雪を圧縮して回転させ、雪と金属の間の摩擦を測っているとか。除雪車が雪を取り除くときにブレードで雪を「切る」のだが、その際の効率的な回転数やらトルクやらを求め、改良するための共同研究なのだという。雪国をより住みやすくするための研究を本当に各方面にわたって展開しているのだった。

つづく

佐藤威(さとう たけし)

1954年、秋田県生まれ。防災科学技術研究所(NIED)雪氷防災研究センター長。理学博士。東北大学大学院で大気境界層物理学を専攻し、東北大学理学部助手を経て、1988年、国立防災科学技術センターの新庄雪氷防災研究支所へ。主に地吹雪の研究を担当する。2001年、新庄支所長になり、2011年より現職。特に、吹雪の発達やそれによる視程障害について野外観測や低温室における実験により予測モデルを開発し、また、屋根雪の滑落条件の研究などに基づき、事故発生危険度の基準を策定した。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合でアニメ「銀河へキックオフ」として放送中。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
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