第4回 雪に弱くなった雪国

 弱層は、見る人が見れば、分かる。冬山に登る人は、自分で雪の状態を確かめて歩くことが推奨されている。ただ、センターが行っている雪崩の危険度予測では、すべての地点に職員をはり付けて、雪の状態を観察しているわけではない。人員的に無理だ。

「予測はコンピュータを使ったシミュレーションです。今積もっている雪に対して、条件はいろいろ変わりますよね。例えば、晴れた日、雪の中にどれほど熱が伝わるかとか、それで融けたのであれば、水分がどういうふうに移動していくかとか。積もったときは雪の結晶の形が目でも見えるんですが、時間がたつと結晶の形が変わっていきます。これは変な言葉ですが『変態』っていいます。昆虫の変態と同じ意味合いですね。変態することで、力学的な性質とか、熱的な性質もどんどん変わっていきます」

 気温がプラスになると一部の雪が融ける。氷の粒の集まりの中に液体の水が共存することになる。すると、氷の粒子が大きくなるという性質があるのだそうだ。これが、「ざらめ雪」。濡れている間は弱く、弱層になる。また、山で冷え込んだときには、雪の中に霜ができる。積もった雪の中で霜が成長して、すると雪の粒同士の結合が非常に弱い「しもざらめ雪」というものに変わる。これも弱層になる……等々。本当に、積もった後の色々な条件で積雪の中の状況はどんどん変わっていく。当然、弱層のあり方も場所も変わる。そういったことをすべて扱えるモデルを作って、シミュレーションするという。そして、リアルタイムで危険度が分かるハザードマップを提供し、道路の管理者などが活用する。そういう流れになってきている。

こちらは降雪粒子観測施設のカメラ。無風状態の煙突のなかで雪を撮影し、粒子の大きさや落下速度などを記録し、統計をとっている。
左は雪の粒子の形(種類)を撮影したモニター。ベルトコンベヤーの上に雪が降るようになっていて、自動で撮影できる仕組み。右は雪の粒子を見る実体顕微鏡。こうして集めた「どんな雪が降っているか」という情報を、レーダーのデーターと照らし合わせ、観測精度の向上に取り組む。(写真クリックで拡大)