その研究提案書を書くのはボクには楽しかった。ずっと自分がやりたいと思っていた研究といま自分がやるべきと思える研究が、ボクの中で初めていっしょになったような気がした。

21歳のボクが大学の指導教官である左子先生に言った言葉。「超好熱菌の研究をします。生命の起源を解き明かしたいと思います。よろしくお願いします」

ボクはその自分のセリフを「ワシも昔はワルかったもんよ」風「若気の至り」的な思い出にしたくはなかった。埃をかぶりつつあったけれど、いつも頭の片隅にその看板は置いていた。それに対する道筋を考えるために、本当に少しずつだが、常にいろんな情報を収集しながら、それらをいつかの時に備えて頭のあちこちにしまっておいたんだ。

そのいつかの時が今だった。蓄えてきたものをゆっくり紐解きながら、「生命の起源を解き明かす」べき研究を、ボクは初めて自分の言葉で、そして魂と情熱を込めて、提案書として書き上げたんだ。もはやその提案が採択されるかどうかは大した問題ではなかった。それを書き上げたことが、ボクにとっての大きなマイ・レボリューションだった。

ふははは。しかし、この真の分野横断研究提案を見逃すようじゃ、JAMSTECもとっくの昔に潰れていたに違いない。その研究提案書を提出して2ヶ月経った頃、ボクらの新しい分野横断研究は始まったんだ。



次回、「『ボクのすべてを注入します』と大物研究者は言った」につづく



『微生物ハンター、深海を行く』(高井研 著)

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高井 研

高井 研(たかい けん)

1969年京都府生まれ。京都大学農学部の水産学科で微生物の研究を始め、1997年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者に。現在は、同機構、深海・地殻内生物圏研究プログラムのディレクターおよび、プレカンブリアンエコシステムラボラトリーユニットリーダー。2012年9月よりJAXA宇宙科学研究所客員教授を兼任。著書に『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る』(幻冬舎新書)など。本誌2011年2月号「人物ファイル」にも登場した。

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