第42回 パタゴニアの雲

 以前にも書いたように、『ブラザーウルフ』を手に取ったすぐ後、同じジム・ブランデンバーグの写真集『Chased By The Light』と出会いました。

 じつは、1日1枚というプロジェクトを収めたこの写真集の巻末には、ジムが人々へ感謝の気持ちを述べた、謝辞が載っているのです。

 90枚の写真を感嘆の目で見終えた最後に、そのページを開いたとき、ぼくはよく知る名前を見つけて驚きました。

「Michio Hoshino:自然写真家として常に私の頭上遥かに輝く存在であった氏は1996年、生涯を通じて崇拝し続けてきたクマの撮影を最後に、この世を去った。ここに深く哀悼の意を表したい。」

 そう……ジム・ブランデンバーグもまた、星野道夫の作品に感銘を受けたひとりだったのです。

 <星野さんに会うことはもはや叶わない。でも、ジム・ブランデンバーグにはどうしても会ってみたい。いや、会わなくてはいけない……。>

 そう感じたからこそ、ぼくはミネソタまでやってきて、カヤックを漕ぎながらジムの家を目指したのです。

つづく

大竹英洋

大竹英洋(おおたけ ひでひろ)

1975年生まれ。写真家。一橋大学社会学部卒業。1999年に米国のミネソタ州を訪れて以降、北アメリカ大陸北部に広がる湖水地方「ノースウッズ」の森に魅せられ、野生動物や人々の暮らしを撮り続けている。主な著書に『ノースウッズの森で』(「たくさんのふしぎ傑作集」)、『春をさがして カヌーの旅』(「たくさんのふしぎ」2006年4月号)、『もりのどうぶつ』(「こどものとも 0.1.2.」2009年12月号)(以上、すべて福音館書店)などがある。また、2011年3月NHK BSの自然ドキュメンタリー番組「ワイルドライフ カナダ ノースウッズ バイソン群れる原生林を行く」に案内人として出演。近著は「森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して」(月刊 たくさんのふしぎ 2012年 09月号)
本人によるブログは「hidehiro otake photography」