第26話 涙の味? ライチョウを食す。

 おそらく、胃で消化する前に、とにかくつめ込んで貯めておくための喉袋で、中を開くと、赤い実がたくさん詰まっている。

 グラウスたちが飛び回っていた林の下には、クランベリーの実が一面に自生しているので、そこで、長い冬を越すために、一生懸命、実をついばんでいたのだろう。

 その赤い実を見ると、私は再び、胸がしめつけられるようだった……。

 すると、再びスティーブが言った。

「その袋の中のクランベリーの実も、僕たちには大切なビタミン源だよ。忘れないで」

 そうだ……、そうである……。

 生きるために肉を食べ、ビタミン源となるものを貪欲に食べることを、頭のど真ん中に置かなければ、ここでの生活はやっていけないのだ。

 胃のなかのクランベリーの実と共に蒸されたグラウスは、本当に涙が出るほどに、食べるところが少なかった。

 味は、スティーブの彼女が、臭みを消すためにとマスタードをたっぷりと塗っていたのでピリリと舌を刺激して、残念ながらそれ以上の味がしなかった。

「ごめんね……」

 私は、小さな肉片を噛み締めながら、心のなかで呟いた。

 でもこれが、原野で暮らすということなのだ……。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/