第5章 1956- 第二期黄金時代からさらなる挑戦へ

第10回 ナショジオがつくった“軽い本”のベストセラーとは

 このところしばらくナショジオが立ちあげたテレビシリーズを紹介してきました。テレビの成功は当時のナショジオにとっていちばんの大事件でしたが、1957年に編集長に就任したメルビル・ベル・グロブナーの業績はもちろんそれだけではありません。

 誌面の改革は第2回の「新編集長はナショジオを床にぶちまけて言いました」で書いたとおり。テレビとコラボしつつ、表紙の変更や全面カラー化、大胆なレイアウトなどの斬新なアイデアを導入し、部数を550万部まで伸ばします。

 1963年には長年の夢だった『Atlas of the World』を発行します。300ページにもおよぶ大地図帳で、12万5000点の地名の索引、すべての国の説明と国旗などをはじめ、さまざまな説明を収録。「これまででもっとも大きく、立派で、野心的な地理への貢献」とメルビルは胸を張りました。

 でも、協会に変革をもたらしたという意味では「特別出版部」を創設したことのほうが大きいでしょう。

 以前から、本を作る部署はありました。ただし、その「図書編集部」が百科事典のような分厚くて高い本ばかり出していたのに対し、特別出版部が手がけたのは平均200ページほどで、もっとテーマを絞った“軽い本”です。

 トップバッターである1冊目はなんと数百万部を超えるベストセラーとなりました。

 この1冊目、どんな本だと思いますか? 雑誌ならいざ知らず、書籍を数百万部売るのはいかにナショジオとはいえ大変だろう、と中の人は思いましたけど、フタを開けてみると、案外なるほどな、というものでした。