ぼくが実際に見たそれと似た風景は北極圏の人々のすさまじい変化であった。ある年、ぼくはアメリカ、カナダ、ロシアの3つの国の北極圏の村に行ったのだが、カナダのエスキモー(日本ではすぐに校正でイヌイットと呼称をなおされるが、現地では彼ら本人がエスキモーと呼んでくれと言っている。エスキモーとは生肉を食う人。彼らはそれを誇りに思っているのだ)の多くの人が肥満なのに驚いた。

 理由は簡単で15年前に村に巨大スーパーができたのだ。それまで彼らは自分でカヤックをこいで極寒の氷海に行き、苦労してアザラシなどの彼らの食物を捕獲し、それを生のまま食べていた。しかしスーパーはカナダ本国から、彼らが見たこともない、甘くておいしいすぐに食べられる加工食品をいっぱい持ってきた。コーラやクッキー、ケーキなどが飛ぶように売れ、彼らの狩猟生活もだいぶ変わった。その結果が急速肥満だった。

 モンダイのそのスーパー前で見たのだが、バギーでやってきた巨漢がバギーから降りるとやっと歩ける状態だった。ヨタヨタとスーパーに入っていって沢山の買い物をしてヨタヨタとバギーに戻り、颯爽と帰っていった。ぼくにはその人の下半身がバギーになっているように見えた。

 ロシアのエスキモーはユピックと言ったが、辺境の小さな村なのでスーパーなど出てこない。住人は昔ながらの狩猟生活をしていたが、アラスカやカナダで見るような肥満はまったくみなかった。

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