第12回 肥満という名の快楽

体重0.5トンの男

 アメリカにいくと、東海岸でも西海岸の都市でもとにかく巨大な人(ニンゲン)が目につく。ぼくが子供の頃、日本で見るアメリカ人はみんな背高ノッポというイメージだったが、現在は単なる巨大な人(要するにデブ)な国の人だ。

 空港から街まで、地下鉄からレストランまで、どこへ行ってもこの国の人は男も女も、どうしてこんなにまで太ってしまっているのだろう? という素朴な疑問でいっぱいになる。他の外国でも風景のなかに1人や2人の極端なデブは目に入るものだが、アメリカの場合は突出してデブの含有率が高い。エスカレーターなどに乗ると、前にいる3~4人が全部エスカレターの幅いっぱいになっている。日本だと通常はエスカレーターの端に体をよせ、とりわけ急ぐ人のためにスペースをつくってやる習慣があるが、アメリカでは誰かに追われても逃げるのでもエスカレーターに乗ったらアウトだなという状況判断が働く。どうしてアメリカはこんなにデブが多いのだろう。

『アメリカン・スーパー・ダイエット 「成人の3分の2が太りすぎ」という超大国の現実』(柳田由紀子・文藝春秋)は、その謎を解く壮絶に面白い(興味深い)本だ。

 冒頭に衝撃的なエピソードが紹介されている。218キロという太りすぎの女性が6年間もソファに座ったまま生活していたために、皮膚とソファの生地が癒着してしまった。病院に運びこまれたがソファにくっついたまま死亡してしまったという。この本には書いていないが排便はどうしたのだろう? という疑問をもつ。想像だがおそらくソファに穴をあけてその下に特大のオマルなんかを置いていたのではないだろうか。家族もタイヘンだ。