状況は決して良くはなかったが、ボクはぜんぜん落ち込んではいなかった。

まだほとんど賛同者はいなかったけれど、地球微生物学という分野を目指すようになって初めて、本当に地球と微生物生態系の関わりについての明確な自分独自のビジョンが頭の中に生まれ出て、そのまだ荒削りなアイデアが、自分が研究者を志した時の最初の動機であった「生命の起源」の謎に迫るかもしれない重要なナニカを内包している直感を信じていたからだった。

転機が訪れたのは、おそらく2004年の初頭だったと思う。たまたま東京大学海洋研究所(現在、東京大学大気海洋研究所)の沖野郷子(おきのきょうこ)准教授がJAMSTECにやってきていて、その年の秋に行われる南太平洋ラウ海盆の熱水調査について打ち合わせをしていた時だった。

カンラン岩、アリかもしれない

打ち合わせもそこそこに、ボクはいつものように「インド洋かいれいフィールドにはカンラン岩が必要なのだ、そーなのだ」説を打っていた。一通りボクの思いをぶちまけた後、どうせまた「ふーん、それで?」みたいな反応が返ってくるのかなと思っていたんだ。

ところが沖野さんは、真剣な表情で「それは、アリかもしれない」と言い出したんだ。

沖野さんは地球物理学的手法を用いた海洋拡大系のテクトニクスを専門とする研究者で、簡単に言えば海底地形や重力、磁気、海底下構造等からなぜそのような地形が形成されたかという大局的なプロセスを明らかにしてゆくことを得意としている。そして彼女はその頃、世界中の海洋底の超低速拡大に興味を持って、カンラン岩を含む超マフィック岩の海底露出構造の出現パターンやそのメカニズムを研究しているところだった。

その超マフィック岩体探しのプロの沖野さんが、インド洋かいれいフィールドの付近に、超マフィック岩がある可能性が高いと言うのだった。

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