第7話(最終話) 新たな「愛と青春の旅立ち」へ
その2 ボクの熱意とジタバタだけではどうしようもない問題
2000年に米国留学から戻って怒涛の深海探査&研究を続ける高井さんが、第7話ではいよいよ「人類究極の研究テーマ」(本人談)である地球生命誕生の謎に挑みます。ただし、それは高井さんという微生物学者一人で太刀打ちできる問題ではありません。別の“武器”をもつ仲間が必要でした。
2000年にボクがアメリカからJAMSTECに戻ってきて以降、ボクは世界熱水微生物生態系制覇という、まるで『魁!!男塾』(かつて週刊少年ジャンプに連載された漫画)の大威震八連制覇(だいいしんぱーれんせいは)的ノリ、の自己満足的研究テーマを掲げて研究に打ち込んでいた。
その世界熱水微生物生態系制覇の中で、現世の地球に生き残った世界最古の持続的生態系の直系子孫であり、地球活動によって創り出された水素(H2)や無機物質から生命活動のエネルギーを得る事のできる、「ハイパースライム」の存在を証明しようと虎視眈々と狙っていたんだ。
「ハイパースライム」というのは、正式にはHyperthermophilic Subsurface Lithotrophic Microbial Ecosystemという英語の表現を下線部分の文字だけでテキトーに短縮した命名なのだが、日本語でフルに書くと、「地殼内超好熱性化學合成微生物生態系」(ドーン!)というまるで中国語のようなモノになってしまい、書く方も読む方も思わず「それ、ウザい。ホント、ウザい!」と言いたくなる。
思いっきり簡単に言ってしまうと、「深海熱水に含まれる無機物質だけで生命活動を支える事ができる微生物の集団が海底下にワサワサいること」、もっと簡単に言ってしまうと、「深海熱水チムニーの中に水素と二酸化炭素を食べる超好熱性メタン菌がたくさんいて一次生産者になっていること」、を見つけることがほぼハイパースライムの存在の証明になる。
その証拠となるような結果が、2002年1月から3月にかけて行われた「しんかい6500」による中央インド洋海嶺かいれいフィールドの調査で得られていた。
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