星野道夫は、アラスカをフィールドに、およそ20年に渡って、自然や人々の暮らしを撮り続けた写真家です。

 国内外で活躍し、『ナショナル ジオグラフィック』でも、1987年8月号で「ムース」、88年12月号で「カリブー」をテーマにフォトストーリーを発表。90年には木村伊兵衛賞も受賞しました。

 その作品と著作は、北国の厳しい自然に生きる野生動物や植物、そして人間への愛情にあふれ、多くの人々の心を捉えてきました。

雪の降る中を、ナキハクチョウの家族が飛んでいく。頭がまだ白くなりきっていない幼鳥は、親鳥が春に再び営巣を始めるまで共に暮らす。(写真クリックで拡大)

 旅を通して深めていった思索。スケールの大きな世界観。そしてなにより、目標に向かってまっすぐに進む生き方が魅力でした。

 ぼくもまた、多くの人々と同じように、その作品に出会ってすぐ虜になり、飽きることなく写真集を眺め、著作を読みふけりました。

 本を開くたびに、心がじんわりとあたたかくなり、広大な自然への憧れがいっそう強くなるのです。

 もし叶うなら、ぜひ一度は話を聞いてみたかった写真家でした。

 しかし、それは最初から不可能なことでした。なぜなら、ぼくが星野道夫という存在を知ったのは、残念なことに、その痛ましい訃報がきっかけだったからです。

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