第24話 奇しくも、たった1匹残されたアンの宿命

 アンにとって幸運だったのは、耳に障害があることを知りつつも、アンを橇犬として育てていくことにしたトーニャのもとで生まれたことだ。

 人によっては、保健所での処分ということもある。

 それでなくても、毎年多くの仔犬が処分されているのである。

 しかしながら、橇犬というのは、ペットとして生きていく以上に、多くのことを覚えなければならない。

 トーニャはどうやって、その教育をアンにしているのだろうか……?

 私は、疑問に思った。

 そして、頭をかしげている私に、スティーブは意外な言葉を言った。

「そんなの、トーニャは何もしてないよ」

 私は、驚くよりも、そんなはずがないという思いのほうが脳裏に起こった。

「え、本当に何もしてないの?」
「そうだよ。なにもしてないよ」
「それで、犬橇として走れるの?」
「走れるよ」

 物静かながら、どこか誇らしい声で言うスティーブに、私は怪訝な声で言った。
「なにもしていないのに、なんだか得意げ……。本当は秘密があるんじゃないの?」