ワタクシこの最終話のマクラを、アメリカ、シアトルのワシントン大学に隣接するホテルで書き始めています。

第2話でも書いたように、約18年前、ワタクシはこのワシントン大学に1年間留学しているときに、「そうだ!深海の熱水域に繁栄する微生物の世界をボクが誰よりもはっきりくっきりと解明するのだ!」と熱い血潮をたぎらせたのでした。あの甘酸っぱくもほろ苦い青春の日々以来、ワタクシはここをちゃんと再訪したことがありませんでした。

また2012年11月のことでした。ワタクシは1997年に巣立ってからほとんど顔を見せていなかった母校の京都大学農学研究科の出身研究室を訪問する機会がありました(ヤミにこっそりと実験室に忍び込むのではなく教授室での挨拶に始まる公式訪問として)。大学院の集中講義を引き受けたことがそのきっかけですが、思えば随分長い間ご無沙汰していたなあと自分でもびっくりしました。

実は、このワタクシの突然のセンチメンタル・ジャーニー詣は単なる偶然ではないと思っています。一つは最近、体のアチコチがあまり順風満帆とは言えず、冗談抜きに「もういつ死んでもおかしくないお年頃になったかもしれぬ」と思い始めたことです。同時にそれはワタクシがこれまでお世話になった人々にも当てはまることを現実として感じるようになったことです。「会えるときに会っておこう。感謝の気持ちは伝えることができるときに伝えておこう」。そう思い始めました。

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