第7回 米国宇宙ベンチャー最新レポート パサデナ編

火星の岩石試料を持ち帰るサンプルリターンの機構をこの会社で請け負っている。試験管のような円筒状の容器にコア(試料)を入れて持ち帰る。(写真クリックで拡大)

 ハニービー(ミツバチ)ロボティクス社は同じく火星探査機に搭載する機器を作っている。ぼくが見せてもらったのは、やはり限りなく「ガレージ」というのに相応しい作業場で、副社長のクリスが樹脂でできた円筒をひとりでいじくっていた。

 聞けば、「2020年頃に計画されている、サンプルリターン計画に使う機構だよ。きのう正式にアナウンスがあったばかりだから、撮ってくれていい」ということで、この世界では珍しく、企業秘密の壁にさえぎられず写真を撮らせてもらった。

 円筒には21ヵ所、試験管くらいの直径の穴が開いており、それぞれ岩石から取り出した「コア」を樹脂のチューブに収めて保管できる。計画では探査機が試料を集めて樹脂のケースに収めておき、後にやってくる回収船で地球に持ち帰るのだそうだ。

副社長のクリス(右)が、業界の古株で今回パサデナのベンチャーを案内してくれたレックス(左)と議論中。レックスは後述のロケットカメラ会社の経営者だが、様々な起業の技術を統合してソリューションを提案するコンサルタントでもある。壁の世界地図はナショナル ジオグラフィック製で、これまで掘削した場所にピンが打たれていた。(写真クリックで拡大)

 また、この会社ではMDA社が提供するアームの先につけて使うドリルも受注している。現在、火星で活動中のキュリオシティのドリルもここで作られたものだ。実はそのドリルは20キログラムと重く、サンプル・リターンの計画では3キログラム程度への軽量化を実現したいという。

「もともと南アフリカで、ロボットを使った無人採掘をしていた。この会社では、別に火星だけではなく、南極でもグリーンランドでも、掘削してサンプルを得る仕事を請け負う。でも、私のPh..D論文は、『火星での掘削』だったんだよ」とのこと。

 火星の表面には超酸化物と呼ばれる化学物質がたくさんあり、ドリルの回転数を上げすぎると摩擦熱で分解して発熱する。そこで止めないでさらにドリルの回転を続けると、さらに周囲の超酸化物を分解して発熱し、その熱で周囲の超酸化物がもっと発熱し……と悪循環に陥っていくという。そういったことを織り込んだ火星仕様のドリルを設計しなければならないのだそうだ。

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