第7回 米国宇宙ベンチャー最新レポート パサデナ編

すべての火星探査機アームの製造にたずさわってきたブレットと。(写真クリックで拡大)

「今、火星上にあるすべてのロボットアームはうちでつくったものだよ」と副社長のブレットは誇らしげに言った。2000年代になって続々と送り込まれている火星探査機、マーズ・エクスプロレーション・ローバーの「スピリット」と「オポチュニティ」(ともに、2004年1月に火星に着陸)、「フェニックス」(2008年5月火星の北極域に着陸)、そして、現在活動中のマーズ・サイエンス・ラボラトリー、いわば火星科学実験室「キュリオシティ」(2012年8月、火星に着陸)、すべてのロボットアームがMDAとその前身が製造したものだ。

 ただし、実物はない。すべて火星に行ってしまっているからだ。

「今、見せられるのはこれくらいかなあ」とブレットが紹介してくれたのは、火星用にしては大型すぎるアームだった。

「これ、国防省のスモー、SUMOという計画で頼まれて作った。計画の立案者がレスリングが大好きだったからこういう名前になったそうだよ。作り上げたら計画がキャンセルされてしまって、だから、今も実物がここにある。後は、マーズ・ホーラー・ランダー用に作ったアームは火星への着陸に失敗して、残念ながらローバーごと壊れて火星のゴミになっているかも……そういうことはある」

 それにしても、自分が作ったものが火星にあるという感覚はうらやましい。日本でも、旧文科省系の宇宙科学研究所(「はやぶさ」などを打ち上げた組織。現在は旧宇宙開発事業団と合併してJAXA)と一緒に惑星探査機を作った企業はもちろんあるわけだけれど、これほど小さな企業が直接契約を結んで、開発を行うというのはなかなかないのではないか。XCOR社で感じた手作り感がここでもありありと伝わってくる。

下側の銀色のアームは火星に運んだものの試作品で、うしろのイラストに同じようなものが見える。右に見えている黒いアームがSUMOのもの。(写真クリックで拡大)