第40回 ただ、いつも、そこにあるもの

 松の木の、てっぺんに近い幹の部分に、まるでこぶのように大きな黒い塊が乗っているのです。

 目を凝らしてよく見ると、そのすぐ脇に、一羽のハクトウワシがとまっていました。

 <そうか、ハクトウワシの巣だ……>

 巣は、枝を組み上げて作られていて、直径はゆうに3メートルを超えているでしょうか。

 はやる気持ちを抑えながら、もっと観察しやすいように岸にカヤックをつけ、防水バッグからカメラを取り出しました。

 200mmレンズをつけてファインダーを覗くと、その巣は、白い雲と青い空を背景にして、まるで天空に浮かぶ楼閣のように見えました。

 さらによく見えるように、2倍のテレコンバーターをつけると、巣の上で首を動かすヒナの姿が、かすかに見えました。

 人里離れた湖のほとりで、新しい生命を育むハクトウワシ。

 そのことを誰かに伝えたくて、ぼくはシャッターを切りました。

 <まさか、旅の途中でハクトウワシの営巣を撮影できるなんて……>

 ノースウッズにやってきたことは、決して間違いではなかったと思える、幸せな瞬間でした。

 ジム・ブランデンバーグの写真集『ブラザー・ウルフ』と出会う前、つまり、あのオオカミの夢を見る前に、すでにぼくは、写真家になりたいと心に決めていました。

 なぜ写真家だったのか。どうしてカメラを手に取ったのか。

 そのことを説明するには、ぼくの人生に多大な影響を与えた、もう一人の写真家について語る必要があるでしょう。