第4回 民間の宇宙船で宇宙に行きたい

 高橋有希さんが、まだ博士課程の学生だった2008年に書いた、「南極と月の類似性──月探査計画策定のための南極経験」(ANALOGS BETWEEN ANTARCTICA AND THE MOON: A SOUTH POLE EXPERIENCE FOR PLANNING LUNAR MISSIONS)という論考がある。「国際宇宙飛行協会」という民間団体の年次総会の紀要に発表されたものだ。

 そこで高橋さんは、まず「南極はさしわたし4000キロメートル、月の直径は3500キロメートル。スケールとして似ている」というところから説き起こす。1910年代の南極探検から始まり、1950年代に各国基地ができるまでの歴史を、月の探査(1960-70年代)以降から再び「月に戻る」今後の宇宙計画と重ね合わせて述べたり、南極と月の環境の類似性(もちろん月の方がずっと過酷なのだが、低温や隔絶されていること、インフラの欠如、物資輸送の困難などに共通点がある)を挙げ、南極経験を月探査へのシミュレーションと見なしている。

 やはりこの人の中では、幼い頃の天文学、天体物理(宇宙の起源)への興味、そして、「宇宙飛行士になりたい!」「月に望遠鏡を作りたい!」という欲望が、常に表裏一体、渾然一体となっているようなのだ。

 博士号論文を書き、厳しい口頭試問もくぐり抜け、はれてPh.Dを取得する中で、高橋さんは、就職をどうするか同時進行で考えなければならなかった。

「僕の博士号論文は、BICEP望遠鏡の開発とかデザインとか、観測の補正とかについてまとめたものだったんです。その間、宇宙論の研究をしているより、望遠鏡の部品を作る手作業ですとかエンジニアリングの仕事をしている時間が長くて、それがだんだん好きになってきたんですよ。ものを作るのって、何かすごくアクティブで楽しいなって。だから、それにフォーカスしたいと思い始めたんですね」

母校でかつての同僚と再会。
(写真クリックで拡大)

2013年1月号特集「果てなき宇宙への夢」
本誌では民間企業が参加する新次元の宇宙開発についてレポートしています。フォトギャラリーもあるWebでの記事の紹介はこちら。ぜひあわせてご覧ください。