第22話 私の怒りの魚事件簿……。

 という心配を大いに裏切って、彼は飛び切り美味しいフライを、皿に山盛りいっぱいに作ってくれた。

 どれも淡白な白身だけれど、それぞれの味や食感がある。

 ホワイトフィッシュは、ヒラメや鯛のようにあっさりとした味で、バーボットは、ふぐの背中の身のようにぷりぷりとしていた。

 ナマズは臭みもなく、例えるならコイであろうか……。

 けれど実は、私は物足りなかった。

 このフライたちのなかで、足りない存在があったのだ。私は、それを一番食べたかった。

 淡水のギャングと言われる、ギザギザ歯のワニ顔の大魚、ノーザンパイクである。

 アラスカに来たなら、鮭でも、オヒョウでも、タラバガニでもなく、私はこの魚が食べたい。

 早く網にかかれ!淡水の怪魚、ワニ顔のパイク!

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/