第2回 「月の南極」から「地球の南極」へ

「学部生の頃に物理学を勉強しながら、天文学と、特に月に魅力を感じていました。それが理由で、月に望遠鏡を設置したかったんですね。月面の南極に大きなクレーターがいくつかあって、その中には太陽の光が通らないんです。なので宇宙を観測するのに良い環境。しかも水が凍った状態で存在しているかもしれないと言われていまして、多分基地をつくるとしたらそこが最適な所と考えられています。だから、基地や望遠鏡を設置する場所として、まずは地球ではなく、月の南極に興味を持ったんですよ」

 月に望遠鏡を設置する計画は、当時、イギリス・スコットランドのグラスゴーで研究している教授がおり、高橋さんは修士課程ではグラスゴーに籍を移して、学位論文をその教授の元で仕上げた。同じ南極とはいえ、まず「月の南極」に先に関心を持ったというのだから驚きだ。

「で、そこから地球の南極のことも考え始めたんですけど、博士課程のバークレーでは、まさにそこに望遠鏡を作るプロジェクトが進んでいました。宇宙の起源について、宇宙はどう始まったのか、世の中のものはどこから来たのか追求するためのもので、僕はそれにも興味があった。それで、話しに行って、そのプロジェクトに参加したんです。月の南極に望遠鏡を設置する前に、地球の南極でまず設置してみたかったというのも、もちろんあります」

 なんだか語られるとあまりにあっさり実現してしまうのだが、天文学、物理学、宇宙の起源、そして宇宙飛行士になりたい! という様々なものが、有機的、重層的に織りなして、そこしかないという針の穴を通すような道のりを歩んでいるというような印象をこの時点で抱いてしまう。