そのサンプルを受け入れる実験室は、別の建物にある。第二の調査機関は測定装置が並ぶ、いわゆる「ドライラボ」だ。

 入り口近くにある装置は、サンプルの中にどんな化合物が含まれているかを測定するもの。ウエットラボから持ち込まれたサンプルの中身を、まず、これで確かめる。

「たとえて言うなら、そのなかの一種類の化合物を叩いて割って、それがどういう元素からできているか。それをまず測ります」

 この機械では、どの化合物が入っているかはわかっても、同位体の割合まではわからない。同位体比率の予想が当たっているかどうかは、また別の装置で測る。
 大河内さんが指さすのが、同位体質量分析計だ。部屋の一番奥に置かれている。この装置では、化合物をイオン化して飛ばし、磁力を使ってカーブさせて測定する。イオンによって曲がり方が違うので、それぞれの量を検出できるというわけだ。

「結果が出るまでに時間がかかるんですよ。でも、それを待ちながら『この化合物では同位体が何パーミル(千分率)くらいやろ』とか言い合っているときはワクワクしますね」

「この装置、いくらだと思いますか?」

 うーん。思い切って、5000万円くらい?

「もう一声、6000万円くらいですね。でも珍しいものではなくて、国内に100台くらいはありますよ」

 意外と多いような気がする。
 たしか大河内さんは、世界でもここでしか測れないものがいくつかあると話していたはず。
 あの、ここでしか測定できないものもあるんですよね?

「そうです」

 他の99台とこれとは、何が違うんでしょうか。

「チューニングです。普通の同位体質量分析計は、どんなものでもまんべんなく測れるように作られています。間口が広いんです。それを、測ろうとする対象にマッチするように改造していきます」

 同位体質量分析計と聞くとかなりな専門装置という印象だが、大河内さんたちにとっては、まだまだ汎用装置というわけだ。
 なんでも測れる万能性は捨て、その代わりに、測りたいいくつかのものは極めて細かく、極めて正確に測れるように装置を改造していく。

同位体質量分析計と大河内さん。極めて細かく測れるようにチューニングしてある(写真:田中良知)
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