File2 科学探偵 大河内直彦

第2回 極めて細かいものを極めて正確に、測る!

1億分の1グラムくらいのわずかな試料を手掛かりに、動物の食べものから大昔の気候までいろんなことを解き明かすJAMSTECの大河内直彦さん。その精緻な分析の裏には、試行錯誤の末に確立した「測る」技術があったのです。


深海研究棟へ案内してくれる大河内直彦さん(写真:田中良知)
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 窒素や炭素など、同じ名前で呼ばれる元素であっても、よくよく分類してみると、少しだけ異色なものがある。
 それは、化学的な性質はほぼ同じでも、重さという物理的な性質が異なるというもの。これを同位体と呼ぶ。
 たとえば、スタンダードな炭素12Cと、中性子一個分重い13Cといった具合だ。

「天然の炭素はほとんどが12Cです。13Cは1.1%くらいしかありません。それが、あるサンプルでは1.101%に増えているかどうか。そういうことを測ります」

 大河内さんが案内してくれたのは『深海研究棟』と呼ばれる建物。

 廊下を歩いていると、天井からユノハナガニのペーパークラフトがぶら下がっている。取材陣が一目でそれをユノハナガニとわかるのは、前回の取材の対象であったゴエモンコシオリエビ同様、熱水噴出孔の近くで暮らす深海生物だと学んだからである。学んだことがわかるようになるのは嬉しいことだと、しみじみ思う。

 ペーパークラフトの前には「飼育室」と書かれた部屋。
「僕らはこの部屋を、カニ御殿と呼んでいます」と大河内さん。
 何を飼っているんですか? もしかしてウナギの卵?

「いえ、今は特には」

 ドアを開けて見せてくれる。どうやら、“元”飼育室のようだ。

 カニ御殿の奥にウエットラボと呼ばれる実験室があった。ここが科学探偵、大河内さんの第一の調査機関だ。

廊下の天井からぶら下がるユノハナガニ(写真:田中良知)
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“元”飼育室(写真:田中良知)
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