ウナギの稚魚のエサは何か。
 その長年の疑問には、有力な4つの説があった。そのなかから大河内さんたちは『マリンスノー説』を支持している。
 マリンスノー、つまり、植物プランクトンおよび動物プランクトンの死骸が、ウナギの稚魚のエサということだ。

 ちなみに他の3つの説は、体表栄養吸収説、オタマボヤのハウス説、ゼラチン質動物プランクトン説。
 わかりやすく言えば、エサは食べず体の表面から栄養を吸収する説(あまり現実的ではないそうです)、オタマボヤという動物プランクトンの使用済みの包巣(ハウス)を食べている説、小さなクラゲなどを食べている説だ。

 さて、何を調べればマリンスノー説を支持するに到るのか。
 答えは、同位体だ。

 同位体。

 この漢字三文字が記憶の底から蘇り、その意味するところも正しく認識できたという方は、次のページへスキップしてください。
「聞いたことはある。けど」という方は、少しばかりおつきあいください。

 ここからの解説、わからなくても大河内さんの研究のすごさはわかります。でも、わかっているとよりいっそうわかります。

 どんな元素も、陽子と電子と中性子とでできていると私たちは中学生の頃に習った。
 このうち、陽子と電子は同数だ。たとえば、陽子も電子も1コなら水素(H)、6コなら炭素(C)、20コならカルシウム(Ca)といった具合。それぞれ、別の元素として扱われる。
 ところが、陽子と電子の数がどちらも同じ6コで「ああこれは炭素だな」と思っても、中性子の数だけが違うことがある。6コだったり、7コだったり。
 これを、同位体という。中性子は化学的には中性なので、6コでも7コでも、化学反応の起こりやすさに影響は出ない。でも、重さが異なる。
 炭素を例に挙げれば、中性子の数も6コのものを12Cと呼び、7コのものを13Cと呼んで区別する。
 実際のところ、世の中の炭素のうち、12Cは99パーセント程度、13Cは1パーセント程度である。

 話をウナギに戻す。

(写真:田中良知)
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