リスク・テイカー 危険覚悟の挑戦者

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戦場の医師

ジル・シーマン

文=パット・ウォルターズ 写真=マルコ・グロブ

ジル・シーマンは困窮するスーダン南部の人々に現代医療を届ける方法を模索する医師。現地に入った1989年当時、激しい内戦のなか、カラアザール(黒熱病)と呼ばれる感染症が大流行していた。近年、南スーダンは分離独立を果たし、内戦は終結。カラアザールの大流行も収まったが、今も暴力や病気などの問題が残る。

――現地入りした当初の状況を教えてください。

私が訪れた地域では、人口の半分以上がすでに亡くなっていました。焼かれる遺体も見たし、遺骨を踏み越えて歩くことも。辺りは不気味なほど静かでした。

――人々に死をもたらした原因とどのように戦ったんですか?

カラアザールに感染すると、発熱や脾臓(ひぞう)の肥大といった症状が出て、何週間も苦しんだ末に命を落とします。治療は可能ですが、「国境なき医師団」の一員として私がスーダン南部に入ったころは、設備のない場所で医療行為を行える専門家がいませんでした。だから、どうすれば小さな村で高度な治療を行えるか、まず調査する必要があったんです。当時も今も、それが私たちの活動の大きな目的です。

――この20年間で、カラアザールは撲滅できたのでしょうか?

いいえ。今は医療体制が整ってきたので大流行は起きませんが、過去3年間で再び患者が急増しています。この1年で2500人を治療しました。これは大変な数です。

――診療所が爆撃されたりしていますが、リスクを冒す性格ですか?

まさか。私は医療とスーダンに情熱を注いでいるだけです。診療所の近くの町で虐殺が起きて、たった2時間で200人もの人が殺されたこともあります。恐ろしい経験はたくさんしましたが、それを理由に南スーダンを去ることはありません。

――南スーダンにいること自体が危険だと思いますが。

私が特別なのではなく、誰もが危険を冒していると言えます。生きること自体が一つのリスクなんです。南スーダンの人々は皆、1時間後に死ぬかもしれないとわかっています。それでも生きているんです。幸せにね。私は何百万という人々と関わって、うまくすれば命を助けられる。これほどやりがいのある仕事はありません。

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