第4回 終末思想とマヤ文明の崩壊

 人口増加により農地が不足し、森林伐採によって環境が破壊され、生態系のバランスが崩れてしまったという説もある。それまでは深刻な食糧不足が極端に長期間続くことがなく、統治者が儀礼によって神に祈り、食糧危機を乗り越えてきた。しかし、もはや人口を支えるだけの農地の減少は限界を越えてしまったため、カリスマ性のある統治者への信頼は崩れてしまった。それまでの社会秩序が壊れ、他の都市への攻撃が急激に増えた。そんなシナリオを描くこともできるだろう。

「世界滅亡」は起こらず、まずは一安心。そんな人も多いかもしれない。しかし、過去にあったことから、私たちはたくさん学ぶことができる。「古典期マヤ文明の崩壊」は非常に象徴的な出来事で、当時マヤ人が苦しんだ戦争や環境破壊などは、人間の力で防ぐことができるのだ。戦争は宗教や領土問題などが原因で起こるが、互いに尊重すれば回避することが可能である。また、環境破壊は一見天災のように思えるが、実は私たち人間が環境に手を加えることで生じる人災である。つまり、私たちは戦争や自然破壊を自ら食い止めることができるのだ。現代人が科学の進歩によって傲慢になり、他の国家や文化の立場をあまり考えずに平和を脅かし、生活の快適さや便利さを追求して、自分たちの環境を壊してしまっているとしたら、何と愚かなことか。

 終末思想と結びつけて、2012年に大いに話題となったマヤ文明。今から2000年以上も前に栄え始めた古代文明のことだからと、単なる昔のこととして片づけず、私たちのいい教訓にすることはできないだろうか。「歴史は繰り返す」とは、的を射た表現であろう。これを機会に、マヤ文明の崩壊をこれから私たちが生きていくヒントと捉えてみてはいかがだろうか。

おわり

多々良 穣(たたら ゆたか)

1967年、宮城県生まれ。東北学院榴ケ岡高等学校教諭。マヤ文明研究者。ペンシルベニア大学への国費交換留学を経て、94年、金沢大学大学院文学研究科史学専攻修了。95年より現職。現在は金沢大学による「ティカル国立公園北のアクロポリスプロジェクト」にも参加している。主な著書に『ようこそマヤ文明へ~マヤ文明へのやさしいアプローチ~』(文芸社)『マヤとインカ―王権の成立と展開』(同成社、分担執筆)、『文明の考古学』(海鳥社、分担執筆)がある。