第40回 葉脈から朽ち加減まで再現した超擬態昆虫

ミメティカ属のヒラタツユムシ(バッタ目:キリギリス科: ヒラタツユムシ亜科)
A dry leaf-mimicking katydid, Mimetica sp.
小雨が降る森の夜道で見つけた。昼間はどこで何をしているのだろう。
体長:28 mm 撮影地:タパンティ国立公園、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 先日、アメリカのボストンへ行ってきた。
 ハーバード大学比較動物学博物館の研究者、ピーター・ナスクレンスキー博士に会うためだ。これまで何度も一緒にコスタリカで野外調査をしてきた調査仲間であり、友人でもある。

 手土産は、コスタリカのコーヒーと、アルコール漬けにしたキリギリスの標本、それにコスタリカ政府の標本輸出許可書。キリギリスの専門家である博士に、コスタリカのキリギリスについて訊いてみた。

――これまでコスタリカでキリギリスが見つかってるの?

「これまでに確認されているキリギリスの仲間は338種類。そのうちの15%ほどに未だ名前が付いていないんだ。調査や研究を続けていけば、種数は400種に達するかもしれないね」

――ぼくが採集したキリギリスも結構いるよね。

「そうだよ。えーっと2010年10月から2012年11月までだいたい2年の間に、ぼくと一緒に採集したものも含めて、約110種、588匹のキリギリスを採集しているね。そのうちたぶん10種類くらいが新種だと思うよ」

 今日、写真で紹介するのはそんなキリギリスの仲間のひとつ、ミメティカ属のヒラタツユムシ。種名はまだわからないが、いくら拡大しても枯葉にしか見えないので、ぜひじっくりご覧ください。

ミメティカ属のヒラタツユムシ(バッタ目:キリギリス科: ヒラタツユムシ亜科)の翅
Forewing of the dry leaf-mimicking katydid, Mimetica sp.
枯れ葉そっくりの翅。葉脈の立体感はいうまでもなく、透けている箇所やカビで黒くなっている箇所、朽ち加減まで忠実に再現されている。
前翅の長さ: 約50 mm 撮影地:タパンティ国立公園、コスタリカ(写真クリックで拡大)
ミメティカ属のヒラタツユムシ(バッタ目:キリギリス科: ヒラタツユムシ亜科)の耳
Hearing organ of the dry leaf-mimicking katydid, Mimetica sp.
キリギリスの仲間は、前脚に聴覚器官がある。左の写真は体全体を上から見たところで、矢印が聴覚器官。右が前脚のアップ。音を拾う膨らんだ部分に穴が2つ。中に鼓膜がある。
大きさ:約2 mm  撮影地:タパンティ国立公園、コスタリカ(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html