第18話 北の漁場の、妄想赤ちょうちん!

 誠に残念ながら、湖の魚だから、刺身は無理である……。

 しかしながら、から揚げポン酢とか、みぞれおろし天婦羅とか……。

 甘辛い煮付けもいいし、素材の味を生かす塩焼きもいい……。

 もしかして、この気候だったら干物もできるかもしれない……。

 などと、まるで赤ちょうちん的な料理の想像ばかりを膨らませながら、美しく聳え立つデナリの山を遠くに眺めていると、スティーブが船首の方から叫んだ。

「そっちを、ピンと張って」
「はい、はい」
 船尾で網を支えていた私は、再び水に手をつけた。
「ひゃ! 冷たい!」
 でも、我慢……。
「あぁぁぁ」
 あまりの冷たさに身悶えるような声が漏れて、
「んんん~」
 がっ……、が、ま、ん……。
「うぅぅぅ、ず・べ・だ・い~」

 こんなに痛冷たい思いをしているのだから、絶対に美味しく食べてやる!

つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/