第3回 儀礼と風習からみるマヤ文明の精神世界

 マヤの神話などによると、洞窟は地下界の王国である「シバルバ(恐怖の場所の意味)」の入口と考えられ、そこにはたくさんの超自然的な生き物や神々がいて、地上の人間の生活に影響を与えていた。洞窟はマヤ人にとって毎日の生活とは違った神聖な場所であり、重要な儀礼の場所だった。いくつかの洞窟では人骨が発見されており、神々へのいけにえとして捧げられたのではないかと考えられている。

洞窟のいけにえ。(写真クリックで拡大)

血を重んじたさまざまな儀礼

 さて、マヤ文明には独特の儀礼や風習がある。少々グロテスクなのは、血を重んじていたことだ。王は自らの身体をエイの尾や黒曜石のナイフなどで傷つけ、血を流すことで神聖なる立場を守ろうとした。ナフトニッチ洞窟の壁画には、男性器を傷つけて血を流したシーンが描かれている。また、ヤシュチラン遺跡の石碑には、女性は舌に斜めに穴をあけてそこに紐を通したことも描かれている。このような血の儀礼を通じて、王だけでなくエリート層の貴族も神々に対して血を捧げ、自分たちの地位を確保したと考えられている。

 神殿の前にある広場では、儀礼が行われたと考えられている。王が緑色の鮮やかなケツァルの羽などで装飾された頭飾りをかぶり、ヒスイの胸飾りや首飾りを身につけて、神殿の前にある広場で踊ったのだろう。王や貴族が顔につけて踊ったと思われるマスクも出土している。そして儀礼の際には、ほら貝や太鼓を使って雰囲気を盛り上げたとされる。洞窟の中からも骨で作られたフルートやこわれた笛、そして太鼓のかけらが発見されていることから、洞窟でも楽器を使った儀礼が行われていたと推測できる。