第5回 世界初!睡眠・覚醒リズム障害の原因を解明

「被験者の方々から、皮膚や毛根の細胞をもらって5日間くらい培養しまして、遺伝子が転写される周期を観察するんです。時計遺伝子、クロックジーンと呼ばれる一群の遺伝子があって、それらが転写されるサイクルが絡み合うように1周するのを蛍光で見る特殊な方法があります。すると、採血してホルモンで測っていた周期と見事に一致するんですよね」

皮膚や毛根などの細胞を培養して時計遺伝子の転写周期を生物発光を使って計測すると、遺伝子の転写とホルモンの周期が見事に一致した。左下のグラフの横軸は経過日数で、縦軸は1分あたりの発光回数。(画像クリックで拡大)

 というわけで、今まで、隔離実験室で厳密にホルモンなどの測定をしたり、日々の睡眠習慣を質問することで個々人の体内時計リズムを測定したり推測していた体内時計の周期が、皮膚や毛根の細胞で確認出来るようになることが原理的にははっきりした。

 臨床の現場で、それが活かされるがいつなのか分からないが、睡眠に悩む人たちがたくさんいる中で、こういった基礎研究が着実に進んでいることは、やはり、知っておくと心づよい。

遺伝子やホルモンを扱う機器。三島さんの主な業務は基礎研究だ。(写真クリックで拡大)

つづく

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。脳病態統合イメージングセンター部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。秋田大学医学部精神科学講座助手、同講師、同助教授を経て、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員助教授。2006年6月より現職。2010年4月より日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事、日本生物学的精神医学会評議員を務める。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider