第4回 目からウロコの不眠症治療法

「最初は高齢者や女性ではないかと思ったんです。ところがですね、実は高齢者はほとんど影響を受けなかった。戦後のかなりタフな時期に思春期を迎えた世代は、経験的に適応する力があったのかもしれません。女性も不眠がもともと多いので、心配だったんですが、それほど増えなかった。一番大変だったのは、30代、40代、50代の男性ですね。例えば仕事を失ったとか、経済的にもかなりダメージはありましたから。家族を抱えている人など、かなり重圧があったんだと思うんです。だけど、レジリアンスといって、人間は元に戻る弾力性みたいなのがあります。それからちょうど1年後の今年の7月の度調査では、不眠症の有病率は、ほぼ震災前のレベルまで戻ってきました」

 極端なストレスで「正常な反応」として「覚醒力」が上がっても、やがて時間ともに元に戻っていく。それは、たしかに人間の生き物としての「正常」な反応を示しているように思える。

 もちろん、中には悪い循環の中にはまってしまい、「正常な反応」を越えて不眠症が慢性化してしまった人も多いはず。そういった人たちへの睡眠科学からの支援も必要なのは間違いない。 

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つづく

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。脳病態統合イメージングセンター部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。秋田大学医学部精神科学講座助手、同講師、同助教授を経て、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員助教授。2006年6月より現職。2010年4月より日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事、日本生物学的精神医学会評議員を務める。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
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