第2回 体内時計25時間はウソだった!

 たしかに、自分の会社員時代も(20年近く前の話だけど)、毎日眠かったと思い出す。混雑した電車の中で四方八方から押されて上手い具合にバランスがとれて、そのまま眠ったりしていたものだ。そうでなくても、目を閉じて眠気を少しでも散らそうとしてた。席に座って眠っている人が心底うらやましかった。

 三島さんはこんなふうにコメントした。

「通勤の時に強い光を浴びるといいんですが、混雑した電車の中で真ん中のほうにいると節電時の中央線などでは100ルクスくらいしかないんですね。窓のほうペタッとくっついて外見ていれば7000~8000ルクスですが……」

 そうか、これは盲点だった。通勤途中で窓にくっついて外を見ると体内時計リズムが改善されるかもしれないわけだ。しかし、当時のぼくも含めて、通勤時間を「睡眠の延長」にしたり、「ちょっとうとうと」したりする人も多いのではないか。

「この機会を逸すると、今、屋内の仕事が多くなっていますから、昼間なのにほとんど室内照明くらいしか浴びない人がかなりいます。結局、もともと私達に備わってた睡眠のリズムの調整がうまくいかなくなるんです。寝つきが悪いとか、昼間に眠いとか、睡眠習慣が現代社会に追いつかなくて、睡眠問題を抱えている人がどんどん増えてきた、ということなんですね」

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つづく

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。脳病態統合イメージングセンター部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。秋田大学医学部精神科学講座助手、同講師、同助教授を経て、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員助教授。2006年6月より現職。2010年4月より日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事、日本生物学的精神医学会評議員を務める。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider