第1回 眠らなくなった日本人

 単につらいだけではなく、不眠症や過眠症がうつ病のリスクを高めたり(こころの健康科学・35万人診療報酬データ)、睡眠不足や睡眠リズムの異常、極端な夜型生活などが、睡眠の質を下げ、日中の眠気を誘発するのみならず認知機能障害やQOL(生活の質)の低下につながることもある。

 社会的な観点からは、「日中の眠気」による国内の経済損失は年間3兆5000億円というすさまじい試算もあり(※)、睡眠の問題は個人の「しあわせ」から、社会的な損失にいたるまで、非常に大きな問題を孕んでいるようだ。

 さて、文筆業のぼく自身、早くとも午前3時、遅いと朝明るくなってから眠るという極端な夜型生活者だ。この原稿も大体深夜に書いている。眠りが浅く睡眠の質が悪い自覚もあるし、日中よく眠たくなる。午前中に用事がある時など、「あした(実はきょう)、起きられるか」とプレッシャーを感じる。「日本人の5人に1人」にしっかりと入っていると思う。睡眠の研究には以前から興味があった。

 そこで、睡眠科学の分野で先進的な研究を行っている国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・精神生理研究部、三島和夫部長を訪ねた。

 この研究所は表から見る限り、国立精神・神経医療研究センター病院、という大きな病院そのものである。西武新宿線小平駅から乗ったタクシーの運転手さんもあくまで病院だと思っていた。車寄せで降車して、外来入り口で案内を請うたところ、研究所は奥に隠れて見えないところにあるとわかった。

※「睡眠障害の社会生活に及ぼす影響と経済損失」内山真、日本精神科病院協会雑誌31巻代11号61-67, 2012