第16話 マウント・デナリは女性? 男性?

山頂が隠れている左の山がデナリ(マッキンリー)で、右端のピークがフォーレカー。デナリ国立公園内ワンダーレイクからは見られないアングル。(写真クリックで拡大)

 マウント・デナリは、よく女性に比喩されることが多い。

 富士山のように、滑らかな稜線を描いている訳でもないのに、女性として扱われるのは、「マザーネイチャー」という言葉のように、大地や海、山や川、自然は全ての命の母であるという考えだからだろうか。

 けれど私には、どこか……、マウント・デナリが男性に見える。

 静かに腕を組み、座する巨人に見えるのだ。

 まるでギリシャ神話の最高神。雲、雨、雪、雷などの気象を支配する天空神ゼウスように、この厳しい大地を見下ろしている。

 それは、人それぞれの感じ方で、想像は自由なのだけれど、あの険しくゴツゴツとした稜線が、筋骨隆々で、どしりとして動かない重厚な男性の守護神のように思えるのである。

「なんて彼は……、勇ましく頼もしい姿だろう……」

 女性を見る目でマウント・デナリを眺めるスティーブ父の横で、私は、男性を見る目で、マウント・デナリを見上げていたのだった……。

 はてさて、みんなには、どのように見えるのだろうか? 

つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/