第16話 マウント・デナリは女性? 男性?

 氷はいろんな方面からの圧力で押し合っていて、あっちで割れて盛り上がり、こっちで割れて盛り上がりを繰り返し、凍ると言っても、静かでフラットではないのだと言う。

 作業の最中に、覆っていた雲が遠くで切れはじめてきた。

 遠くの景色を隠してしまっていた霧も晴れて、悠々としたマウント・デナリ(マッキンリー)の姿が現れたのだ。

「おおお……」

 私は、感嘆の声を上げて見入った。

 まるで、花形役者がもの凄い脚光の中で、勇ましく現れたように、見ごたえがある。

 スティーブの父親は、ブルドーザーのエンジンを再び止めた。そしてしばらく、その雄大な姿を眺めている。

 ブルの運転席から、小さく聞こえてきた。

「なんて、彼女は美しいのだろう……」

「ん、彼女?」私は、とっさに聞き返した。

「そう、彼女……、奇麗だろう……。私は40年以上、ここで暮らしているが、彼女の姿に飽きたことがない」

 スティーブ父が、しみじみと言った。