第16話 マウント・デナリは女性? 男性?

 突然、エンジンの掛かる音がして、ブルドーザーがもの凄い轟音をあげて動き出した。まるで戦車のように突き進んでくる。

 運転席を見ると、スティーブによく似た髭を生やした初老の男性で、遠くからスティーブが、「僕の父だよ」と言った。

 スティーブの父親は、このミンチュミナで40年以上、罠師として生計を立てながら、妻とスティーブ、そして、すでに嫁に行った娘を養ってきたという。

 スティーブ同様に、このロッジの主な力仕事や重機による仕事などを手伝っているのだった。

 作業はかなり大掛かりなもので、湖底にくい込ませている支柱を抜いて、桟橋をブルで引き上げるというものだった。

 その様子を見ていた私は、
「湖が凍るだけなら、冬の間、浮き桟橋をそのままにしておいても、いいのではないですか?」と言った。

 すると、
「湖は、凍っても動いているんだよ」
 と、エンジンを切ってスティーブの行う手作業を待っていた父が、小さく優しい声で言った。