第16話 マウント・デナリは女性? 男性?
すると、スティーブは、
「もちろん、飛行機で運んできたんだよ」と言う。
「もちろんって……、こんなにデカイものが?」
「そうだよ、ブルだけでなく、このブルを動かす燃料だって、2年分ほど、まとめて空輸してるんだよ」
「ひょえ~」私は、のけぞった。
実は、このロッジの以前のオーナーは、ここの経営に破綻している。
道路もなく、水や電気のインフラもない本当の原野で、一から開拓をして、ロッジの経営をはじめたのはいいけれど、都会と同じような便利な暮らしを、この森に持ち込んだために、無理が生じたのだ。
雨水を溜めて水道の設備を整え、太陽パネルによる自家発電所を作ったところまではいい。
けれど、重機やバギー、スノーモービル、その他、建材や薪を作るためのチェーンソーなどのためにも、結局、石油を焚かなければならない。
言ってみれば、森の生活でありながら、石油に依存した生活であって、街の暮らしよりも、石油やお金を使う。
今のオーナーのトーニャは、前オーナーが無計画に拡大させたロッジを、なんとか石油に依存しない森の暮らしにするために、模索していたのだ。