(写真:田中良知)

 心優しいのである。小中学校時代は剣道少年だったが、ある日「争うのは自分には向いていない」と気づき、高校からオーケストラに転じたほど。

 地球を何とかしなくては。その思いを忘れないままに進学した大学で出会ったのが、微生物だった。微生物の力を使えば、環境問題を解決できるかもしれない。

「大学では誰よりもたくさん実験したし、その分、失敗もしました」と自負するほど、陸上の微生物同士の共生について研究を続けてきた。

 では、海のことは?

「うーん。陸のものをやる人は、なぜか海のものはやらないんです。だから当時、海の微生物の話は他人事のように聞いていましたね。自分がやるなんて、夢にも思っていなかった(笑)」

 陸派の和辻さんが海派へ転向した理由はシンプルだ。

「この世界は、なかなか就職先がないんですよ。僕がこの研究所へ入れたのはたまたま。上の方からは海に関する研究をして下さいと言われました。おどろくほど自由なので逆にテーマ探しの勉強をたくさんすると、海にも微生物の共生があるのがわかった。それで喜んでテーマに選んだんです。だから、海の共生が研究したくて、ここに来たわけではないんですよ」

 研究対象が陸から海へ変わったことで、当然ながら船に乗ることも多くなった。しかも1カ月間くらいずっと船上で生活する航海も珍しくない。

オーケストラのリハーサル風景。指揮をとるのが和辻智郎さん。(提供:石井亮一)

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