壁を隔てて隣には、培養などを行うための、低温室も完備されていた。 立ち入らせてもらう。8畳くらいの広さで、窓がなく、空調がかなり強く効いているなと思ったとたんに体が震え出す。ああこうやって筋肉が震えて血流量を増やして体温の低下を防いでいるんだなあ人体はよくできているなあなどと悠長に考える余裕はK瀬にはない。

 ここ、何℃ですか?

「4℃くらいですね」

 ゴエモンコシオリエビは、こんな寒い環境で暮らしているのか。

 敗北感で一杯になって部屋の外へ出ると、ハンガーに、いかにも温かそうなコートがかかっていた。

誰よりも実験したし、失敗した

 今ではすっかり深海の専門家である和辻さんだが、もともとは陸派だ。学生時代は、陸上に生きる微生物を研究していた。

 バクテリアに代表される微生物を学ぼうと志したのは、「学校教育のせいだと思うんですけどね(笑)」と振り返る。

 1973年生まれの和辻さんは中学生の頃、このままではオゾン層のあちこちに穴が開き、環境破壊が進み、地球は瀕死の状態に向かう一方だと習い、胸を痛めた。

「これはよくない。どうしたら解決できるのか」

気温4℃の低温室。ピンクの液体の中で微生物を培養している。(写真:田中良知)

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