「この部屋にはあまり長い時間いないようにしているんです。コシオリエビの行動は面白くて、ついつい見てしまうので」
わかります。一匹一匹に名前をつけたくなります。Y尾さん、なんて名前付けます? 和辻さんは?
「やはり研究の対象なので(笑)。あまり愛着を持たないようにしています」
そうだった。和辻さんにとってゴエモンコシオリエビは実験台なのだ。だからたくさん捕まえてきて育てても、いつかは消費する。それが研究者と研究対象の定めである。
「でも、新江ノ島水族館にいるものは、もう4、5年、生きています。もともと、寒いとところにいて、代謝が遅いので、相当、長生きなのかもしれません」
なんだか、SFによく登場する、人体を低温状態に保って老化を防ごうというコールドスリープみたいな話だ。
「灯りを点けっぱなしにしておくと、光合成細菌、つまり、光のエネルギーを使って生きるバクテリアが水槽に紛れ込んでしまう可能性があるので、そこは注意しています」
部屋の電気を消し、ゴエモンコシオリエビ飼育室を後にし、今度は和辻さんのグループが使う実験室へ。