小川の奥へと進んでいくと、流れはほとんどありませんでした。

 まるで道路のように、一定の幅でくねくねと曲がりながら水路が続いています。

 しばらくいくと、かすかに「ポチャン」という音が、草のしげみから聞こえてきました。

 <ビーバーかな?>

 それからというもの、パドルを漕ぐ手も慎重に、なるべく音を立てないように先へ進みました。

森を歩いていると一本のシラカバが目にとまった。尾状花序(びじょうかじょ、catkin)と呼ばれる雄花が枝いっぱいに垂れ下がり、風景に楽しげなリズムを与えていた。(写真クリックで拡大)

 この、何か生き物が逃げていくような「ポチャン」という音は、川を進んでいく途中で何度も聞こえました。

 が、その正体はさっぱりわかりません。

 <ぼくには見えないけれど、向こうは気づいている……>

 草のしげみの向こうから、何かがぼくをじっと見つめているような気がしてなりません。

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