罠師である父をもち、子供の頃から夏も冬も、この過酷な自然環境のなかで暮らしてきたスティーブの言葉には重みがある。
私はスティーブに、その先を尋ねるのをやめた。
もちろん、火を長くもたせる方法を聞くつもりだった。
けれど、もう少し自分で試してみることにしたのだ。
そんなとき、オリバー爺さんの小屋のドアがギギギーと開き、優雅に毛を靡かせるイングランドコリー犬と共に、両手に杖をつきながら歩いてきた。
私の顔を見て、
「はじめての夜は、寒かったのじゃろ?」と言う。
「寒かったです……。それに、もの凄く暑かった……」
そう答えると、オリバー爺さんは、スティーブ同様に静かに笑った。
「ベニヤ小屋の壁には、断熱材が入っておらんからのう。焚き火の番をして、野宿するのと変わらんじゃろう」
確かに、火が消えたらすぐにも、野外と変わらない気温になってしまうのだ。