File1 深海エビを飼う男 和辻智郎

第1回 胸毛がワイルド!ゴエモンコシオリエビ生け捕り作戦

「水圧の変化により深海生物が死亡するというこれまでの概念から、さらに踏み込んで気泡化により死亡するという考えに達したことが、解決の糸口になりました」

 この発想の転換があったから、比較的シンプルな装置で飼育ができているのだ。そう思って改めて水槽を見ると、ここへ到るまでの道のりの険しさを実感できる。

「ということは、この殻があるから圧力の変化に耐えられたというわけではない?」

「ない、ですね」

 ちなみにこの水深を超えた奇跡のゴエモンコシオリエビは、新江ノ島水族館でも見ることができます。

ゴエモンは茹でられてはいない

 困難を乗り越えてたどり着いた横須賀の地で、ゴエモンコシオリエビは水温4℃という環境で飼育されている。生息域の深海もそのくらいの低温。手を入れると痛いと感じる冷たさだ。

 しかし、たしか熱水が湧いているはずでは?

「湧いている水は確かに300℃と猛烈に熱いのですが、その孔から10センチも離れれば水温はすぐに4℃くらいに下がります」

 つまりこのゴエモンは、元祖のように茹でられてはいない。ちなみに、茹でても赤くはならない。色素を持っていないからだ。