File1 深海エビを飼う男 和辻智郎

第1回 胸毛がワイルド!ゴエモンコシオリエビ生け捕り作戦

(写真:田中良知)

 確かに、眼玉が飛び出してしまっている深海魚を見たことがある。圧力の差に耐えられないせいでああいったことが起こるはずだが。ゴエモンコシオリエビでも同じようなことが?

「いえ、ゴエモンコシオリエビの場合、硬い殻に覆われているので、魚のように目や浮き袋が飛び出て死ぬことはありません。ただし生き物が深い海から浮上してくると、周囲の水圧の変化を受けて、血液に溶け込んでいた空気が溶けきれなくなって、気泡化します。その結果、体中に泡ができて血液の流れを止めてしまい死んでしまうのです。いわゆる潜水病と呼ばれる現象です」

 和辻さんは、最初に船上に引き上げられたゴエモンコシオリエビを見て「おかしい」と感じた。

「少し、水の中で浮き上がっていた。なので、これは気泡化だ、潜水病だろうと」

 そこで和辻さんは、潜水病を防ぐ方法を編み出す。

 しかし、圧力の変化が悪さをするのなら、深海並みの圧力を掛けたまま引き上げるしかないのではないか。だから、引き上げつつ圧力を掛けられるような装置を用意するとか。

 ところが、和辻さんのとった戦法は違った。
 水を入れ替えたのだ。