File1 深海エビを飼う男 和辻智郎

第1回 胸毛がワイルド!ゴエモンコシオリエビ生け捕り作戦

最初の生け捕り作戦は「全滅」

 ゴエモンコシオリエビを捕獲するには、まず、その生息域へ近づいていく。

無人探査機「ハイパードルフィン」。ロボットアームやカメラを備え、母船「なつしま」からケーブルでつないで深海を探査する。(提供:JAMSTEC)

 生息域、つまり沖縄トラフの海上へは、JAMSTECの誇る8隻の研究船の一つ「なつしま」で到達。あらかじめ見つけておいた熱水噴出域へ、無人探査機「ハイパードルフィン」を送り込む。

「熱水噴出域は、過去の研究者ががんばって探し当てたものです。一度見つかれば3次元の座標が定まるので、探査機はタクシーに乗る感じで目的の熱水噴出域につきます。真っ暗闇の中で目的地に着くことは凄いことですけど」

 ハイパードルフィンには、カメラなどのセンサーのほか、ロボットアームが備わっている。

「そのロボットアームでわしづかみですか」

「いえ、そうではありません。掃除機のような機械で吸引して、ターゲットを入手します」

 問題はそのあと、母船へ持ち帰るときだ。深い海の底で暮らしていた生き物は、そのまま海抜ゼロメートルまで引き上げられると、たいていトラブルに見舞われる。

「僕がこの研究所へ来たのは2007年4月ですが、そのすぐ後、最初にゴエモンコシオリエビを捕獲した時は、その後の航海の途中で全滅してしまいました」

ゴエモンコシオリエビを吸い上げる。(提供:JAMSTEC)