File1 深海エビを飼う男 和辻智郎

第1回 胸毛がワイルド!ゴエモンコシオリエビ生け捕り作戦

動画:深海の底にうごめくゴエモンコシオリエビの群集。無人探査機ハイパードルフィンで撮影。(2分9秒)(提供:JAMSTEC)

 ゴエモンコシオリエビは、深海の熱水噴出孔の周辺にだけ集まって生息しているエビだ。熱水噴出孔とは、地熱で温められた、300℃近い水が湧き出るところ。ゴエモンの名は、釜でぐらぐら茹でられた石川五右衛門の伝説から来ている。

 和辻さんはこのゴエモンコシオリエビを、沖縄トラフの深海にある熱水噴出域から、ここ横須賀まで連れ帰ってきて、飼育をしているのだ。

「今、ここにいるのは1000メートルの深海で捕まえたものです」

 1000メートルと言えば、1キロ。東京スカイツリーの上に東京タワーを接続し、それをまっすぐに沈めてもまだ余裕がある。本来なら、そんなに深いところで暮らしているものが、目の前の水槽で飼われているのだ。

 しかし、当たり前の光景にも見えてしまう。ごく普通の水槽を使っているからということもあるだろうし、水族館の深海魚コーナーにつきものの、いかにも深海といった照明がないことも理由の一つだろう。環境の違いを超えてここで生きていることの凄さ、ありがたさが、見た目にはわかりにくい。

「意外と飼育は簡単なのかも」

 K瀬がそう言うと、Y尾が「そんなことないでしょう」と取りなすより先に、「ここまで連れてくるのが大変だったんですよ」と和辻さんが言った。