File1 深海エビを飼う男 和辻智郎

第1回 胸毛がワイルド!ゴエモンコシオリエビ生け捕り作戦

神奈川県横須賀市にあるJAMSTEC本部。海の研究探検隊のいわば「基地」だ。撮影しているカメラマンの背後は海、岸壁に調査船が停泊していた。(写真:田中良知)(写真はすべてクリックで拡大)

 建物の看板には、生態環境実験棟と書かれている。

「こちらです」

和辻智郎さん。JAMSTEC深海・地殻内生物圏研究プログラムの研究員。1973年、兵庫県生まれ。(写真:田中良知)

 ドアを開け、穏やかに取材班を案内してくれるのは、和辻智郎(わつじ ともお)さん。海の男という感じでもなく、学者然としているわけでもない。1000人以上いるこの研究所のなかで、和辻さんは、深い海に暮らす生き物、そのなかでも甲殻類、つまり、殻に覆われた生き物を研究している。

 殻で覆われていると言えば、たとえば、エビとか、カニとか。和辻さんは、そのうちの一種を、世界でもほとんどほかに例を見ない生け捕り、そして、水槽での飼育に成功した人物なのだ。

 薄暗い廊下の隅にある部屋のドアを開けて、壁のスイッチで電気をつける。すると、そこには3つの水槽が並んでいた。

「ゴエモンコシオリエビです」

飼育室のドアには「使用中 ※ゴエモンコシオリエビ飼育実験中」の文字が。(写真:田中良知)