第37回 ぼくが出会ったなかで一番スゴイ擬態昆虫

ハエモディアズマ・テセラタの幼虫(キリギリス科:ヒラタツユムシ亜科)
A lichen-mimicking katydid nymph, Haemodiasma tessellata
わかりましたか? これを見つけたのは、調査に同行していたMari Shirakawaさん。ありがとう。「よう見つけたわ~、ほんまに」
体長:27 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 昆虫の正体は、キリギリスの仲間の幼虫!
 木の幹の表面に育つ地衣類や苔、菌類が描く模様に擬態している。

 しかも、なんと木の幹にはこの虫が収まるくぼみがあって、虫はそこに体をはめ込むようにじっとしている。おそらくアゴを使って幹の表面を削ったのだろう。おかげで胸から胴にかけての膨らみは、横から見てもあまり目立たなくなっている(下の写真)。

 専門家によると、このキリギリスの仲間は、植物の葉や花、実を食べるという。昼間はこの位置にずっと動かずいて、夜になると木の幹を上って、枝を伝い、食事にでかけるのかもしれない。そして夜が明けるとまた、木の幹の一部になりすますのだ。

 このキリギリスに出会ってからぼくは、木の幹の表面をそれまで以上にじっくり見るようになった。


キリギリスの種の同定は、ハーバード大学比較動物学博物館のPiotr Naskrecki博士にしてもらいました。ありがとうございます。

横から見たところ。幹の表面が少しえぐれて、くぼんでいるのがわかる(矢印)。胴部の下側は鮮やかな蛍光グリーンなのだが、横からみるとなぜか、地衣類の淡い青っぽいグリーンに見える。(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html