ヒドイ夜だった……。
まるで砂漠のど真ん中で干物にされ、北極の氷の上でガチンガチンに凍らされたような気分を一晩で味わった。
問題は、薪ストーブなのである……。
このベニヤ小屋の暖房は、ゴールドラッシュ時代によく使われた、小さなドラム缶を横にして煙突を付けただけの「ユーコンストーブ」と呼ばれるものである。
熱効率がよく、すぐにも部屋が暖まるのだけれど、なにせフロンティア時代の簡素で粗野な作りなものだから、扱い方も少々荒っぽい。
西洋建築のパンフレットにあるような、〈憧れの薪ストーブ〉〈サンタクロースが下りてくるような暖炉〉といったファンシーさや繊細さもなく、ゴロンと薪を入れて、かっかと焚くだけの鉄のかたまりである。