第12話 暴れん坊薪ストーブとの闘い

 よく考えてみると、私は火の扱いに慣れているが、『火を朝までもたせる』ということに意識を置いたことがなかった。

 例えば、私が働いていたカナダの牧場の薪ストーブは、あくまでも石油ヒーターのセカンドだった。

 冬の気温がマイナス20度ほどにもなるため、家の中を通る水道管が凍らないように、セントラルヒーターが常に家中を温めているので、夜中に火が消えても、さほど寒くはなかった。

 ニュージーランドで働いていた牧場でも暖炉を使っていたけれど、あれはまさに家主の見栄であって、お客さんが来るときだけ火をつけていたし、暖房というより、炎を眺めるための鑑賞物だった。

 要するに、薪のくべ方や、火のつけ方などは比較的簡単で、誰にでもできるけれど、その火を燃費よく、かつ長時間もたせるということが、ここでは要求されているのである。

 はてさて……、どうしたら、粗野で荒っぽいユーコンストーブの火を、朝までもたすことができるのだろうか……。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/