気がつくと、すでに夜が明けていました。

 テントの中は明るく、あたりはしんと静まりかえっています。

 昨夜は極度の緊張に耐えきれず、いつのまにか気を失うように眠りに落ちてしまったようです。

手を差し伸べるかのように伸びたヌマヒノキの枝。一羽のゴジュウカラがとまり、辺りをうかがっていた。(写真クリックで拡大)

 ぼんやりとした意識の中、外に出てみると、大気は湿気を含んで重く、景色はどこも、白く煙っているように見えました。

 大地や湖面に激しく打ちつけた雨のしぶきが、細かな霧となって、まだ宙をさまよっているかのようです。

 目の前に広がる湖は、昨日の荒波がウソのように穏やかでした。

 静まりかえった湖面をながめていると、アビのつがいが、のどを震わすようにして、悲しげな鳴き声を響かせながら横切っていきました。

<よかった。生きてる……>

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