第10話 アラスカの森の仙人が、お隣さん!

 私にベニヤ小屋を案内してから、キャビンの冬支度のための煙突掃除をしていたスティーブが、屋根の上から私と爺さんのことを見ていて、
「彼はね、ここの森の先生だよ」と教えてくれた。

 トーニャも深く尊敬している人で、ここでの暮らしのアドバイザーとして、一緒に暮らしていたのだった。

 その夜、スティーブが夕飯を作ってくれた。

 食料庫にあるもので簡単に料理したものだったけれど、美味しく頂いて、食後にのんびりしていると、再びオリバー爺さんが訪ねて来た。

 コリー犬を従えて、私のそばにゆっくりと腰を下ろすと、震えるような細い声で話し始めた。

「ワシは、アラスカに来て50年以上になる。若い頃は、第二次世界大戦に徴兵されて、戦闘機に乗る機銃の撃ち手だったんじゃ……」

煙突掃除をするスティーブ。(写真クリックで拡大)

つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/